小野 裕之
2014年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
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2014年11月01日 |
小野 裕之 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.108) |
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社会のさまざまな問題に立ち向かう生活者が身につけておくべきリテラシーとは何かについて、有識者へのインタビューを通じて探っていく本連載の第二回は「ソーシャルデザイン」がテーマ。社会の一員として、関心のある社会課題の解決は誰もが願うもの。しかし、自分自身がそこにどう関われるのかという「方法」は知識として共有されていない。NPO法人グリーンズの小野裕之理事は小さな“ほしいもの”をつくることの積み重ねを推奨する。
元気のなかったおばあさんが生き生きした顔に
手編みのマフラーなど、ニット製品をオーダーできるフランスのウェブサイト「ゴールデン・フック」には作り手のおばあさんたちの写真が並んでいる。購入する人は作ってもらいたいおばあさんを指名したり、交流したりすることができる。きっかけはあるデザイナーが保養所に大叔母さんをたずねた際、退屈そうにしているおばあさんたちを見て、社会に関わるきっかけになればと思い、仕事を手伝ってと声をかけたことからはじまった。
買い手は時間に余裕のあるおばあさんが丁寧に作った商品を手に入れることができる。作り手のおばあさんたちは無理のない範囲でお金を稼げるうえに、感謝のメッセージが届くことで生きがいを感じることができる。経営的にも好循環が生まれている。
この企画に関わる人すべてが便益を得ており、商売としても持続可能性が高く、しかも高齢者の社会参画や生きがい醸成、社会的承認の獲得といった社会課題の解決にもつながっている。それは迂遠で壮大なものではなく、自分にとって身近で小さな“現実”への対応であるところに意味がある。これはひとつの事例にすぎず、同様の取り組みや実践が世界のいたるところで起こっているのである。
社会課題を解決する仕組みをつくる
ユネスコが立ち上げた「DESIGN21」というSNSサイトでは「ソーシャルデザイン」を“Better design for the greater good”(大きなよいことのためのデザイン)と定義している。他にもさまざまな定義があるが、私たちは「社会的な課題の解決と同時に、新たな価値を創出する画期的な仕組みをつくること」だと考えている。社会にマイナスをもたらしている課題をプラスに転じ、しかも俗人的な努力にゆだねるのではなくそれを仕組み化する。それがソーシャルデザインだと。