小西池 透
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2015年11月02日 |
小西池 透
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都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.111) |
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「今朝も人工知能ロボット"スマート君"に揺り起こされ、彼が淹れたコーヒーで目を覚ます。朝食の新鮮なサラダは、植物工場から宅配専用ドローンが届けてくれた。いつもは自動運転機能付きのマイカーで通勤するが、今日は在宅勤務の日。バーチャル社内会議の資料は"スマート君"が瞬時にまとめてくれる……」。20××年の平均的ビジネスマンの朝はこんな風に始まるのでしょうか。
今回のテーマは、「生活者から見る"スマート"」。本誌でもいくつか事例紹介をしたように、スマート革命は、すべてのモノをインターネットでつなぐことにより、食・住のあり方や働き方などのライフスタイルはもとより、企業行動や産業構造までも一挙に変えてしまう可能性を秘めています。
しかし、未来のスマート社会が生活者の利便性を飛躍的に高める一方で、徹底的な効率化に向かうことは想像に難くありません。例えば、これまで人間の手によってなされてきた営みの多くが機械に置き換わり、人間が職を失う時代がやってくると言われています。さらに注目すべきは人工知能の進化が人間社会にもたらす影響です。物理学者のホーキング博士は、「自分の意思を持って自立する完全な人工知能を開発できたら、それは人類の終焉を意味する」と警鐘を鳴らしています。
仮に未来がこのような方向に進んでいくなら、われわれが今からなすべきことは何なのでしょうか。それは、効率化だけではなく、その対極にある人間らしさを重視した社会をしっかりとデザインしていくことでしょう。そうした社会とは、人工知能にはない"五感"や"感情"を持った人間がしっかりとつながっている社会であり、機械が人間を牛耳るのではなく、人と人との触れあいを機械がサポートする社会でなければなりません。
スマート革命は「つながり革命」ともいわれています。人間同士の強固なつながりをもとに、人間が人工知能には決してマネのできない新しい知恵や価値を次々と生み出し、生活者は心豊かな日々を送り、創造的な文化や芸術で世の中が満たされている、そんな「人間らしさ溢れるスマート社会」を私たちの手で実現したいものです。