情報誌CEL
生活者の意識を探る 第三回 生活経営
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
2016年07月01日
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豊田 尚吾 |
住まい・生活
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ライフスタイル
消費生活
その他
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情報誌CEL
(Vol.113) |
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はじめに
今回のテーマは「生活経営」である。生活を賢く営むことでウェルビーイング(よい生活)を実現する。そのためには生き抜くための生活経営力も必要だし、ウェルビーイングとは何かという自分なりの洞察も重要である。以下、前半は生活の基盤を確保するという意味での生活経営力に関して、生活の余裕度および生活経営力の自己評価という観点から論じる。それに加え、後半ではいかに生活満足度(主観的幸福感)を高めるかについて、2つの評価指標を紹介しつつ、感謝介入法などの取り組みの有効性についての考察を行う。
その1 生活に余裕がないと不安も大きい
多くの生活者は日々の暮らしに対する悩みや不安を抱えている。その中でもお金に関する悩みは生活の質にも大きな影響を与え、無視することができない。本調査(*)での「今現在のあなたの生活は金銭的に余裕がありますか」との質問に対する回答がChart 1である。「非常に余裕がある」との回答が0.9%(45人)しかないことをはじめ、「余裕がある」「どちらかといえば余裕がある」まで含めても全体の約22%に過ぎない。
加えて、「どちらともいえない」が約24%、広義の「余裕がない」(=「全く余裕がない」〜「どちらかといえば余裕がない」の合計)が54%と半数以上である。これを見ても経済的な余裕を感じることのできる生活者は多くないことがわかる。
この金銭的余裕度と生活不安には強い負の関係が存在する。例えば「収入・日々のやりくり」「貧困に陥る懸念」「雇用の維持・就職の機会」「物価の水準」などに対する不安感は生活の金銭的余裕度と統計的に有意な関係が観察される。すなわち余裕がないほど生活不安が大きい。雇用を失う不安が大きいので生活の余裕を感じられないといった方向の因果関係もあるかもしれない。しかし基本的には余裕がないから様々な生活リスクに脆弱な家計経営を強いられて不安が大きくなると理解するほうが妥当だろう。そうであるならばウェルビーイング実現の社会課題の一つはそのような脆弱性を克服するためのエンパワーメントということになる。
その2 生活経営力指数を算出する
では生活を経営する力はどのように培われるのであろうか。
(*)大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所が行ったネットアンケート調査「ライフスタイルに関するアンケート」のデータ。約5000人を対象に、2015年2月に実施。調査主体は(株)マクロミル。