情報誌CEL
「クールジャパン」のイメージを超えるサブカルチャー トリスタン・ブルネ
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2016年11月01日
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情報誌CEL
(Vol.114) |
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「クールジャパン」の代名詞のように扱われる日本のアニメやマンガの世界。
海外でも人気は高いが、実際にどのように彼らが受け止めているのかを日本人が知る機会は意外と少ない。自ら「オタク」と公言し、日本史学研究者や翻訳家という顔ももつトリスタン・ブルネ氏に、母国フランスでの日本アニメ・マンガブームを軸とした日仏両国の社会情勢や精神性など幅広い独自の視点で、日本のサブカルチャーの過去・現在・未来について語っていただく。
日本アニメにみられる深い共感性
フランスは、世界各地から20万人を超える来場者がある日本サブカルチャーの祭典、「ジャパンエキスポ」の開催地だ。このことから、フランスでは日本のサブカルチャーブームが沸騰しているという認識をもつ人も多いだろう。では、フランスで初めてヒットした日本アニメは?
「その答えは、1978年に国営第二チャンネルで始まった『UFOロボ グレンダイザー』です」とブルネ氏。日本ではやや認知度が低いアニメながら、フランスではSFブームの波にも乗り100%に近い視聴率すら叩きだしたことがあるという。
フランスにおける日本アニメの快進撃は、氏の著書『水曜日のアニメが待ち遠しい』に詳しい。70年代後半、全国放送のテレビチャンネルが国営第一・第二の2つしかないフランスでは、熾烈な視聴率争いがあった。『グレンダイザー』の成功以降、日本アニメは子どもに受けると判断した両局は、『宇宙海賊キャプテンハーロック』『科学忍者隊ガッチャマン』など日本アニメを次々と放送し、ヒットを飛ばしたという。
注目すべきは、これらを日本のアニメと認識している子どもがほとんどいなかったということ。登場人物や必殺技がフランス固有の名称に翻訳されるなど、違和感なく受け入れられるような工夫があったためだ。ブルネ氏は著書でそれを、つくり手たちは何ら意識していないながら、子どもたちにとっては「刷り込み」だったと表現している。「この時期の子ども向け番組でのアニメの紹介が、現在にまで至る、フランスにおける日本のサブカルチャー需要のビッグバンだったことは間違いありません。実際、この時期に一種の刷り込みを受けたことで、それ以降、何の抵抗感もなく日本のサブカルチャーを楽しめた僕らの世代は、フランスにおけるオタクの第一世代と呼び得る存在となっていったのです」
日本のアニメは、「日本性」を強く意識させない形でフランスに登場したのだ。