情報誌CEL
「外」の経験により前進した“医領解放”への道 杉本 真樹
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2017年03月01日
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情報誌CEL
(Vol.115) |
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世界で最初に超高齢化を迎えた日本。医療の現場ではさまざまな開発が進んではいるが、高齢化問題への具体的な解決策は、まだ示されていない。外科医師でありながら、テクノロジーを駆使した医療機器の開発などにも携わり起業家としての顔ももつ杉本真樹さんに、自らが切り開いていった海外での幅広い体験と、そこでの気づきの数々、さらに将来に向けた” 医領解放(*)” への熱い思いなど、独自の視点とグローバルな目線で語っていただく。
(*)杉本氏による造語
地方病院での創意工夫が世界的研究につながる
オープンソースの医療画像ビューアー「OsiriX(オザイリクス)」を使って臓器から血管内まで人体の中を縦横無尽に体験できるVR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)をつくり、さらに3Dプリンターによって患者自身の腫瘍まで含んだ臓器モデルを作成する。杉本氏は最新テクノロジーを次々と医療に取り込み、治療や若手育成に役立ててきた医師だ。2014年にはApple社が選ぶ「世界を変え続けるイノベーター」30人に選出されている。
「もともと、病状をわざわざ文字化してカルテに記入するのは非効率だと感じていたのです。特に、お腹をあけて手術をする外科医にとっては、文字のカルテより立体画像の方が直観的に理解できます。また、医学用語を知らない患者さんにとっても、3Dなら自分の身体がどうなっているかがわかりやすいはずです」
そう話す杉本氏は、米国カリフォルニア州で退役軍人局パロアルト病院に勤務していた経験がある。日本人離れした発想や、IT技術を医療に結びつけるスキルはアメリカで身につけたものかと思いきや、今につながる研究活動の発端は2004年、千葉の地方病院に勤務したことだったという。
「中央の大病院は分担制です。診断は他の医師で、CT画像は担当者が用意してくれて、手術の判断はボスが行い、私たち外科医は手術を担当するという感じです。田舎の小病院では何もかもを自分でやる必要がありました。立体画像データの方が病状を示すにはふさわしいという考えはすでに頭の中にあったので、その画像を自分でつくってみようという気になったのです」
パソコンで試行錯誤しながら、簡単な3D画像をつくってみると、同僚が「これは面白いし役に立つ。ぜひやろう」と目を輝かせた。「それが単純に自分のモチベーションになりました」と氏は語る。