池永 寛明
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2018年07月01日 |
池永 寛明
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都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.119) |
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グローバル時代における「都市」のあり方を考える際、近年においては人々の生活文化をかたちづくる「食」の重要性はますます高まっていると言っても過言ではない。都市における「食」とは何かを考えるため、CELの池永寛明所長が海外の美食都市を巡り、日本における食と都市・地域文化の関係について考えたことを伝える。
昨年度の情報誌『CEL』(116〜118号)では、創刊30周年を迎えて、これからの日本を考えるために「ルネッセ(Renesse/ 再起動)」──私たちの生活文化の基盤「都市」にある本質を過去より掘り起こし、現代・未来へとつないでいく──という考え方を提唱してきた。そして、続く実践のための準備段階に入った今年1月と3月、イタリアとオランダ、デンマークの都市を歩いた。イタリアは、「食による地域文化」をテーマにした調査であったが、北欧においても、先に掲載しているイノベーティブな動きのひとつに「食」があったことを知り、そこから都市・地域のあり方をめぐる議論につながる流れを見ることができた。これは、今後の日本のあり方を考えるうえでも有益なヒントになるのではないだろうか。
各都市で異なる
「食」の位置づけ
今回訪れた都市のなかでも、イタリアのパルマやデンマークのコペンハーゲンは世界的な「美食都市」と呼ばれている。美食都市の定義ははっきりしないが、たとえばユネスコは、「創造都市ネットワーク」という都市間の戦略的連携を図る一環として、ガストロノミー(食文化)を都市戦略に組み込むなど、広義に「食」を見直す動きを示している。
日本では唯一山形県鶴岡市がその取り組みを行っているが、どれだけの人が都市戦略としての食を認識し理解しているのだろうか?
そもそもイタリアやフランスなどは古い時代からの美食の歴史があり、多くの観光客が食を楽しむために訪れ、料理人もイタリアンやフレンチを学びに世界中からやってきている。私たちがそれをヒントに新たな取り組みを行っていくうえでも、なぜこれだけ継続され、発展し続けることができるのかという文脈・本質を探ることができなければ、いくら「美食都市を目指そう」と声を上げても、表層的なものになってしまいかねないだろう。
そんな日本の食の課題について考えながら歩いていたせいか、イタリアのまちなかで日本食らしき飲食店が多々目につく。2015年のミラノ万博で日本料理がブームになって以降、イタリアのみならず世界中で「日本料理」的なレストランや寿司店が増えていることは、ニュースなどで知ってはいたが、さすがにここまでとは思っていなかった。世界最古の金融都市であるシエナでは「OSAKA」という看板が目につき思わずスマホのカメラを向けた。