情報誌CEL
「ルネッセ」を総括する
−2年間の活動を振り返って
作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
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備考 |
2019年03月01日
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池永 寛明
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都市・コミュニティ
住まい・生活
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コミュニティ・デザイン
地域活性化
ライフスタイル
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情報誌CEL
(Vol.121) |
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本誌115号「都市・地域のルネッセ(再起動)に向けて」での提言から始まった「ルネッセ」。理念でもあり実践的行動でもある「ルネッセ」は、さまざまな分野に活動領域を広げ、多くの方々と互いに知的交流を続けながら、未来へつながる実りを生み出してきた。今号では、その総集編として、提唱者でもある池永寛明大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所所長が「ルネッセ」を総括するとともに「ルネッセ」に関わりのある方々からの寄稿やインタビューを掲載し、2年間の活動を振り返る。
「『文化』とは何か?」――すべてはここから始まった
2016年4月に着任して最初に思ったのは、「エネルギー・“文化”研究所」の「文化」とは何だろう、ということでした。文化とは、芸能、文学などと捉えられがちですが、芸術や作品それ自体を指すのではありません。文化の語源は“cultivate”で、「栽培・耕作」を意味します。土地を耕し、種を蒔き、水・養分を与え、収穫し、取り出した種をまた植えるという人の営み、つまり、文化には人間が何らかの活動を繰り返し、承継していくことに本質的な意味があります。
そして、環境や道具の変化に伴い「栽培・耕作」の方法が変わっていくように、文化も環境や時流に合わせて姿を変えていきます。しかし、すべてを変えるのではなく、「本質」を残しながら、最適化・洗練化していくのが承継の本来のあり方です。
このように文化本来の意味を捉え直すと、現代社会のゆがみの原因が見えてきます。何でもかんでもイノベーションを志向し、「違うこと」「別のもの」を求め続けた結果、本来受け継ぐべきものを残せず、「本質」が見えなくなってしまった。現代社会がこれまでの価値観や規範・制度とさまざまな場面で適合不全を起こしているのは、本来受け継ぐべき文化の「本質」を見失ってしまったからではないでしょうか。
停滞する日本を再び活性化させるため、失った「本質」を現代に取り戻そうと、私が提唱したのが「ルネッセ(Renesse)」です。ラテン語の「再び(ren)」と「実在する(esse)」を掛け合わせた造語で、私たちの生活文化の基盤である都市・地域社会がもっていた「本質」を過去から掘り起こし、現在に合わせて再起動することで、新たな価値を創造しようというものです。
そのための方法論を確立すべく、スーパー・アドバイザーとして協力を仰いだのが松岡正剛さんです。