村山 洋史
2020年03月01日作成年月日 |
執筆者名 |
研究領域 |
カテゴリー |
媒体(Vol.) |
備考 |
---|---|---|---|---|---|
2020年03月01日 |
村山 洋史 |
都市・コミュニティ |
コミュニティ・デザイン |
情報誌CEL (Vol.124) |
ページ内にあります文章は抜粋版です。
全文をご覧いただくにはPDFをダウンロードしてください。
弱い紐帯の強み
――これからのつながりづくりを考える
社会との紐帯(つながり)は、高齢期においてこそ重要な意味を持ち、その有無が、心身の健康にまで影響を及ぼす――。
「高齢社会2030を考える会」第3回でも解説された東京大学高齢社会総合研究機構の村山洋史特任講師の提言が、高齢社会を変える可能性を示唆する。
つながりが私たちの健康を左右する
私たちの健康は、運動や食事など、日常の行動に大きく左右される。しかし、実はそれらの行動は、人や社会とのつながりを通し、知らず知らずのうちに周囲の人々から影響を受けている。2010年に発表されたメタ分析[*1](同じテーマを扱っている研究を集め、それらの結果を統合して結論を出す方法)では、禁煙、適度な飲酒、運動などのいわゆる「健康的な生活習慣」よりも、社会とのつながりが多いことの方が死亡リスクが低いと報告されている。
人間は「社会的生き物」といわれるように、私たちは多かれ少なかれ誰かと何かしらのつながりを持って生きている。最近の健康づくりの現場では、そういったつながりをうまく活かしたり補ったりしながら、結果的に健康になれるような仕組みづくりが進められている。
ところが、現代の日本人は決してつながりに恵まれているわけではない。OECD(経済協力開発機構)の調査[*2]では、対象となった21加盟国中、日本は2番目に社会的孤立者の割合が高かった。日本人の近所付き合いの程度の変遷をみてみると、今から50年ほど前は多くの人が密な付き合いをしていた。しかし、近年ではそういった人はごく少数にとどまっている。かつては豊かだった日本人のつながりは、時代とともに徐々に希薄になっていると理解することができる。
では、つながりが少ない日本人はつながりに対してどういう意識を持っているのだろうか。ある調査[*3]では、「多くの人から理解されていなくても、気の合った仲間さえわかってくれればよい」という質問に「そう思う」と回答した者の割合は、10代、20代の若年層で約8割、50代、60代でも6〜7割にのぼった。この割合は、性別や年代を問わず、2000年以降増加傾向にある。
注
*1 Holt-Lunstad J, Smith TB, Layton JB. Social relationships and mortality risk: A meta-analytic review. PLoS Medicine 2010; 7(7): e1000316.
*2 OECD. Society at a Glance. 2005.
*3 野村総合研究所、 生活者1万人アンケート調査 (2000〜2018)