入江 智子
2021年07月01日作成年月日 |
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2021年07月01日 |
入江 智子 |
住まい・生活 |
住生活 |
情報誌CEL (Vol.128) |
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まちという存在が、人々の集まり住むことで生まれるものである以上、個々の住まいとまち全体の営み、活気、文化、その未来に深い関係があるのは当然のこと。とりわけ、存在感の大きい集合住宅のありようは、まちのイメージを鮮やかに変える力をもっている。
老朽化と住民の高齢化により、既存の公営住宅をどうするかが課題となる現在、公民連携という新しいスキームで注目されるのが大阪府大東市のmorineki プロジェクトだ。
核としての集住施設を地域へ積極的に開いていくことの意味と価値、それにより進化するまちの姿を、同プロジェクトの中核を担う入江智子氏にお聞きした。
青空のもと萌える新緑に輝いているのは、生駒山地の北端に位置する飯盛山。真新しい低層の木造住宅からは、その姿が思いのほか近くに迫る。間近に感じるのは、山だけではない。すべての住戸が面する中庭は、ゆるやかな通路として中心にある芝生の広場へとつながり、物理的にも心理的にも隔てられることなく周囲のまち並みへ自然に開かれていく。
ここ「もりねき住宅」は、大東市の市営飯盛園第2住宅跡地にこの春オープンしたばかりの複合拠点、morinekiプロジェクト[*]の中核をなす住宅棟。約1ヘクタールのプロジェクト敷地には、ほかにアウトドアショップやレストランなどが入る商業棟と、オフィス棟もあり、整備にあたって全国でも先進的な公民連携(PPP=Public Private Partnership)の手法を導入したことで注目されている。
その仕組みは、入札や従来の第3セクター方式ではなく、あくまで民主導で資金調達から建築、所有、運営まで一貫して行うユニークなもの。具体的には、市と民間運営企業(市も出資)が共同で物件の所有会社を設立し、その会社が市からの借地に物件を建て、管理する。民間の運営会社が明確な事業展望のもと、金融機関から借り入れを行い、採算性と透明性を担保した経営を行えるのが大きなメリットだ。
「当面、住宅棟はすべて、もとの市営住宅の住み替え物件として市に借り上げてもらいますが、その後は協議のうえ順次、民間賃貸住宅に切り替える計画です」
事業を機に大東市職員から転身し、現在は運営を担う大東公民連携まちづくり事業株式会社(以下、コーミン=略称)の代表取締役を務めるプロジェクトのキーマン入江智子氏は語る。
注
*大阪府大東市の市営飯盛園第2住宅跡地に整備され、2021年3月にオープンした複合施設。名称は、森(飯盛山)のねき(河内弁で「近く」を意味する)にあることに由来する。