六人部 生馬
2021年11月01日作成年月日 |
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2021年11月01日 |
六人部 生馬 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.129) |
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デジタル社会に今や欠かせないコミュニケーションツールとして、爆発的な拡大を見せたSNS。
情報発信のハードルを劇的に下げ、誰もが自らの意見や知識、表現を発信・共有できるようになった半面、特定の意見や立場による分断と対立の温床になったり、膨大すぎる情報にSNS疲れを起こしたり――そうした負の側面に疑義を突きつけるかのような“もうひとつの道”が今、注目されている。
巨大であること、広く、遠い世界をつなぐこと、そんな設計思想の逆をいく「ローカルなSNS」は、インターネットがかつて夢見た幸福のかたちをどのように描き、実現しようとしているのだろうか。
日本における同サービスの草分け「ご近所SNSマチマチ」代表・六人部生馬氏にお話を伺った。
地域の関連性を掘り起こす新しいSNS
2010年にサンフランシスコで設立され、アメリカ人の2人に1人が使っているという「Nextdoor」や同傘下に入ったイギリスの「Streetlife」、オーストリアの「Frag Nebenan」など、世界各地でローカルなSNSの躍進が続いている。日本も例外ではない。2015年に誕生した「ご近所SNSマチマチ」は、利用者が実名登録することで、住む町の子育て情報やおすすめの店、病院、イベント、防犯、防災といったローカル情報の交換ができる日本発のネットサービスだ。スタートから6年の間に月間200万人が利用する日本最大の地域掲示板に育ち、今や国内80%の地域で活用。さらに、政令指定都市の行政区を含めた122もの自治体や東京消防庁、大田区医師会などと提携するなど、公共機関の活用も進んできた。
インターネットやSNSはその性質上、「広く、遠く、頭でつかむ情報と話題」に偏りがちだが、マチマチはあえて「狭く、近く、五感でつかむ情報と話題」への扉を開く。その躍進の舞台裏に足を踏み入れる前に、まずは創業の動機を伺っておこう。株式会社マチマチの代表取締役CEO六人部生馬氏は、00年代の情報通信革命のさなかにソフトバンクで経験を積んだネットテクノロジーのプロフェッショナル。マチマチ創業にあたっては、どんな経緯があったのだろうか。
「自分に子どもが生まれ、評判の良い保育園や小児科など子育てや暮らしに関する地域の情報をインターネットで探してみても、得られる情報が少ないと感じたことが第一のきっかけです。紙媒体を集めたり、たまたま知り合った人たちから聞き出したりするしかない。父が横浜で三代続く不動産会社を経営しており、地域の情報は何でも手に入る環境で育ちましたので、このギャップは衝撃的なものでした。私自身は常にネット技術の進化を肌で感じる仕事をしてきましたが、いざ自分の住む地域に戻ってみると、そのメリットを享受できない状況にあると気づいたのです。