藤代 裕之
2021年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
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2021年11月01日 |
藤代 裕之 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.129) |
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登場から約20年で、多くの人の情報インフラとなった「ソーシャルメディア」。
誰もが情報を発信できるメディアとして、新たなビジネスを生むことも期待されたが、近年は、「フェイクニュース」をつくり出すといった負の側面も多く見られる。
なぜ、汚染された情報やニュースが氾濫してしまうのか。
新しい情報インフラとの関わり方を考えるために、その仕組みを明らかにする。
人からモノへ、この先も続く情報爆発
「ソーシャルメディア」の定義は多様だが、本稿ではユーザーがインターネット上にコンテンツを投稿できるサービスとする。ソーシャルメディアの登場により最も大きく変化したのは、マスメディアを通さずに、誰もが気軽に世界に向けて情報を発信できるようになったことだ。
ソーシャルメディアの最初のサービスは、1999年からアメリカでサービスを開始したブログだとされる。その後、FacebookやTwitterといったSNS、YouTubeなどの動画サイトなど、多様なサービスが生み出された。これらのサービスをさらに拡大させることになったのは、2007年のアップルによるスマートフォンであるアイフォンの発売だ。スマートフォンにより、いつでも、どこでもインターネットに接続できる状況となり、サービスはスムーズに利用できるようになり、人々が発信する情報は爆発的に増加した。
博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所が毎年発表しているメディア総接触時間は、2006年の335・2分から2021年は450・9分に増加している。テレビや新聞などへの接触時間は減っているが、スマートフォンやタブレットからの接触が年々増加している。今後は、しゃべる家電やつながる自動車などのIoT機器が普及することが予想され、メディアは人からモノへ広がっていく。IoT機器がメディアだとの認識は現状では乏しいが、かつてコンピューターもメディアと考える人はいなかったのである。IoT機器はメディアになり、発信される情報も接触時間もさらに増加するだろう。
民主主義や新たなビジネスへの期待
ブログやSNSの黎明期には、一部の選ばれたメディア関係者だけでなく誰もが記者となる市民ジャーナリズムや、インターネットを通して政治的な話題を議論していく熟議といった、民主主義の取り組みについて多くの議論が行われた。誰もが情報を発信できることはメディアの民主化と捉えられた。