岡安 孝弘
2021年11月01日作成年月日 |
執筆者名 |
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2021年11月01日 |
岡安 孝弘 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.129) |
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多くの人が肌身離さず持つスマートフォン。その便利さを享受する一方、つながり続けることが依存を引き起こし、心の健康に悪影響を及ぼしているのもまた事実である。
デジタル社会をポジティブに歩んでいくためにも、インターネット依存を正しく理解し、対処していくべきではないだろうか。
そこで、デジタル社会のメンタルヘルス問題を専門とする岡安孝弘教授に、依存に関する心理的メカニズムと、我々が知っておくべき治療法や予防法について解説していただいた。
インターネットの普及と依存
1990年代初頭にインターネットの商用利用が開始され、パーソナルコンピュータの普及と共に、90年代後半には一般の人々にも急速に浸透していった。アメリカの精神科医であるキンバリー・ヤング博士は、その頃からすでにインターネットの過剰利用により家族や友人との人間関係に亀裂が生じたり、仕事や学業に支障が生じたりしている事例を多数報告し、インターネット依存の危険性を警告している。
当初からの依存の対象はオンラインゲームが主流であり、最近では特に、大勢の参加者が相互に交流を図りながら競い合う多人数同時参加型のオンラインゲームへの依存に陥る若者の数が世界中で急増している。そのような状況を重く見て、WHOによる最新の疾病分類であるICD-11では、「精神・行動・神経発達の疾患」の中に、新たに「ゲーム障害」を診断カテゴリーとして加えることが発表されている。
さらに、わが国で2008年にiPhoneが発売されてから、若者を中心にスマートフォンが急速に普及してきた。スマートフォンは時間や場所を問わず容易にインターネットにアクセスすることが可能なことから、オンラインゲームだけでなく、LINEやTwitter、InstagramなどのSNSへの依存も大きな問題になりつつある。
本来、人々の生活を豊かにするための便利な道具として開発されたはずのインターネットが、一部の人を虜とりことし、仕事や学業に支障を生じさせ、人間関係を崩壊させ、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす原因となっている。ここでは人々がインターネット依存に陥るメカニズム、およびその治療法や予防法について紹介する。
インターネット依存とは何か
インターネット依存とは、「インターネットの使用に対する強い欲求のために、その長時間の使用を制御できず、心理社会的機能の低下をもたらす行動パターン」である。