遠座 俊明
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2023年03月01日 |
遠座 俊明
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住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.132) |
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デジタル格差問題が高齢社会の大きな課題となっている。高齢になっても元気・健康を維持するためには、健康寿命の前に活動寿命を延ばす必要があるとの研究知見をもとに、筆者は「健康・生きがい就労トライアル」の仕組みを自治体・NPOメンバーと構築し、取り組んでいる。ここでは、その取り組みのひとつであるスマホ講座について紹介する。
高齢者を取り巻く急激な環境変化
「急速に進むデジタル化は人類史に残る大変化!」とは東京都の小池都知事の発言だが、社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル化による変革)により急速に変わりつつある。自衛隊大規模接種会場のコロナワクチン予約はインターネットでしか受け付けず、銀行は支店窓口やATMを減らし、インターネットバンキングでの自行内送金は無料にする一方、紙の通帳は有料化している。交通機関の時刻はネットで調べるのが一般的になり、航空各社は紙の時刻表を廃止した。
これまで社会で普通に行われてきたことが、インターネット利用に次々と置き換わっている。各自治体発行の広報紙もやたらとQRコードが並んでいて、スマートフォン(スマホ)を使えないと世の中のサービスを利用し難くなってきている。
このような状況下、高齢者の間でもスマホの所有率が急速に伸びていて、2022年NTTドコモモバイル社会研究所の調査では70歳台のスマホ所有率が1年で8%増え70%になったという。しかし所有者がスマホを使いこなせているかというとそうでないことも多く、家族の安心のために“持たされている”だけで、電話機能しか使っていない高齢者も少なくない。
筆者が取り組む「健康・生きがい就労トライアル」の取り組みは2020年に健康寿命をのばそう!アワードで、2022年にはアジア健康長寿イノベーション賞で表彰され注目されつつあるが、今や就労や地域活動のために誰かと連絡をとるのにもスマホは必需品になっている。
一般的なスマホ講座の課題
スマホが生活インフラとなっている今、スマホの使い方を学びたいという高齢者は非常に多い。しかし、通信キャリア会社などが数十人規模で実施している初心者向けスマホ講座を受講した高齢者に話を聞くと、その時はわかったような気がしたが、家に帰って自分のスマホでやるとうまく使えなかったとの声を多く聞く。