伊藤 達矢
2025年03月01日作成年月日 |
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2025年03月01日 |
伊藤 達矢 |
住まい・生活 |
ライフスタイル |
情報誌CEL (Vol.136) |
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「とびらプロジェクト」「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」――東京藝術大学の伊藤達矢氏が手がけるアートプロジェクトは、社会に新たな視点と対話を生み出し、課題解決の糸口を提示してきた。SDGsや地域活性化といった文脈で文化芸術の可能性が再評価される今、伊藤氏は「アートは社会と人をつなぐ触媒」と語る。果たして、アートは私たちの生き方にどんな示唆を与え、社会をどう変えうるのか? 伊藤氏の活動を通して、その可能性をひもといていく。
JR上野駅公園口からほど近く、多くの人々で賑わう上野恩賜公園。不忍池を擁する豊かな自然の中に、美術館や博物館など9つの文化芸術施設が点在している。今回お話を伺った伊藤達矢氏が所属する東京藝術大学(以下、藝大)のキャンパスはこのエリアにある。敷地内には明治期に建てられた煉瓦造りの校舎や、巨大な二次元コードがデザインされたユニークな建物が並び、長い歴史と革新が共存する総合芸術大学の風格を漂わせている。
現在、社会連携センターの副センター長を務める伊藤氏の経歴は、藝大ひと筋だ。油画科へ入学し、大学院では美術教育研究室に所属。その後は先端芸術表現科で助教を務めるなど、アートの道を順調に歩んできたようにみえる。しかしその過程でやはり葛藤もあったそうだ。大きな転機となったのは大学院に入る時だった。
「改めて自分のやりたいことは何だったのかと、深く考えました。専門性を持ってやっていくべきことは何だろう。アーティストの道に進む学生も多いなかで、私は、アートを介して人々が学び、実践できるような『場』をつくることに強い関心を持っていたので、その研究をしたいと、美術教育の研究室に進んだのです」と言うように、大学院時代はさまざまなアートプロジェクトの運営に携わった。
大学院を修了し先端芸術表現科で助教となった伊藤氏は、「とびらプロジェクト」に参画することになる。これは、2012年、隣接する東京都美術館のリニューアルを機に、美術館と藝大と市民が連携するアートコミュニティ形成事業として創設されたものだ。「それまでも美術館とのコラボレーションはありましたが、美術館という社会装置が持つ機能を更新させていこうという取り組みは、これまでになく新しいものでした。