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情報誌CEL

橋爪 節也

2025年03月01日

万博遺産 第12回(最終回)

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2025年03月01日

橋爪 節也

都市・コミュニティ
住まい・生活

まちづくり
地域活性化
ライフスタイル

情報誌CEL (Vol.136)

ページ内にあります文章は抜粋版です。
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いよいよはじまる EXPO 2025
――どんな現代世界を映しだすのか

世界の国が一堂に会する万国博覧会には、世界情勢が象徴的にあらわれてくる。典型的な例が、昭和十二(一九三七)年のパリ万国博覧会である。
「近代生活における芸術と技術」をテーマに四十四ヶ国が参加し、一八五日間の会期中、三一〇四万人が入場した。平和的な博覧会のはずであったが、この前年にスペインの内戦がはじまり、第二共和政政府によるスペイン館には、ドイツ軍の爆撃に抗議したピカソの《ゲルニカ》が出展された。
さらに会場の写真を見ると、明治二十二(一八八九)年の第四回パリ万博のときに建設されたエッフェル塔がそびえ立ち、手前には二つの特徴的なパビリオンが向かいあっている。国章にある鎌と槌をかかげたソビエト館(旧ソビエト連邦)と、鷲に鉤十字がそびえるドイツ館である。二年後の昭和十四(一九三九)年、ドイツ軍によるポーランド侵攻がはじまり、第二次世界大戦に突入していく。その直前のざわつく世界を象徴するのが、この会場風景である。
EXPO'70日本万国博覧会(大阪万博)ではどうだったか。東西対決の"冷戦"の時代、アメリカ館とソ連館が、絶妙に対峙する形で会場に配置されていた。
アメリカ館は、巨大なドーム建築に、宇宙船の「アポロ8号」の司令船や、「月の石」が展示された。宇宙工学が生み出した空気膜構造によるドームで、この技術は後の東京ドームなどの建設に展開していく。一方、ソ連館は、地上三階、地下三階の巨大な建築で、天井まで八十メートルある吹き抜けには、同国が開発した宇宙船「ソユーズ」の実物が展示された。
水平のドームと垂直にそびえる建築。二つのパビリオンは対照的な外観を示して、自国の国力や文化を誇り、宇宙開発の技術を競った。会場の航空写真を見ると、にらみあうようなこの二館を核に、他の国々のパビリオンも絶妙な位置に配されている。日本館は距離をあけ、太陽の塔やお祭り広場をはさんで、東側に位置していた。
会場のヴィジュアル・イメージは時代の記憶を呼びさます。いよいよ二〇二五年の大阪・関西万博がはじまる。そこには、どんな現代世界の縮図が反映されているだろうか。とても興味深い。

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